確実に消えゆくカタチ
【確実に消えゆくカタチ】
うちの若いスタッフに
「柏餅って、どんなカタチ?」と聞くと
「丸いカタチですよね!」と言います。
多分、今は編笠というカタチより丸いカタチの柏餅が多いので当たり前です。
昔は柏餅は編笠というカタチに決まっていましたが、機械がお饅頭を作るようになってからは柏餅も丸くなりましたので編笠の柏餅を作っているのは、うちのような小さな手で作っているお菓子屋さんだけになります。
手で作る編笠の柏餅と機械で作る丸い柏餅のどちらが良いという問題ではなく、今の和菓子屋さんの状況を見ていると必ず編笠の柏餅は無くなります。
私が和菓子屋をする頃は、他所の和菓子屋さんで働かせてもらい朝からは朝生を作って上生菓子を作って焼菓子を焼いてカステラを焼いて、羊羹を流して、餡を焚いて、どら焼きを焼いて、薯蕷饅頭を蒸して、ということが基本としてあって、その上で季節のお菓子を作るというのが当たり前の世界でした。
そのこと全てを出来るようになってから独立してお店を出すという流れですので、お店を出すとなると、その全てのお菓子を作る機械や道具を揃えなければならないので職場も広くてはいけないので、お店を出すというのは労力と相当のお金が必要でした。
なので大量生産の会社が店舗を増やして行くのに比べると個人店が出店する数というのは昔から少なかったと思います。
(洋菓子屋さんと比べても圧倒的に少ない)
それに現代の和菓子屋さんの風潮は、細分化されていき修行なんかしなくても経費も安くつく、どら焼きだけ、おはぎだけ、最中のトッピングだけ、練り切りだけのお店になってきていますので、昔ながらの何でも作る和菓子屋さんの新しい店舗が出来るのを見たことがなく
この時期しか売れない柏餅専門店なんて出来るはずもなく、必ず編笠の柏餅は無くなります。
別にカタチによって味が変わるわけでもないので無くなってもいいのですが、うちの場合は別の事情があります。
「この柏手餅を食べてくれた人が健康になりますように」と一つ一つ作る時に祈っているかは不明ですが。笑
『柏手餅』という菓銘にしているので、
柏手を打つように編笠で柏餅を作らなければなりませんので。